処理物の全量回収・歩留まり向上を実現する遠心分離機・ろ過乾燥機とは?
遠心分離機やろ過乾燥機を使用していて、以下のような悩みはありませんか?
「処理物が残留してしまい、手作業での回収に時間がかかる」
「残留ケーキが蓄積して、処理効率が低下していく」
「回収作業時の異物混入リスクや作業者の安全性が心配」
特に医薬品や化学品など、わずかなケーキの残留も許されない高付加価値製品の製造現場や微細粒子といった分離困難な処理物を扱う現場では、これらの課題が深刻です。
本記事では、全量回収技術がもたらすメリットから従来機器の技術的課題、そして最新の全量回収技術まで解説します。
自動で処理物を全量回収できるメリット
自動で全量回収できるメリットは2つです。
- 残留ケーキ層除去により、ろ過抵抗の回復と処理量の増加
- 処理物や人体への汚染がなくなる
残留ケーキ層除去によりろ過抵抗の回復と処理量の増加
従来の設備では、スクレーパや撹拌翼といった排出機構とろ材の間にケーキが残留し、ろ過抵抗を増大させる要因となっていました。ケーキはバッチごとに蓄積され、処理効率を著しく低下させる原因となっています。
全量回収が可能な設備では、この残留ケーキ層を完全に除去できるため、1バッチ当たりの回収量が増加し、次バッチ処理時のろ過抵抗が大幅に軽減。これにより、処理時間の短縮、エネルギー効率の向上、そして安定した品質での連続運転を実現できます。
処理物や人体への汚染がなくなる
従来の遠心分離機やろ過乾燥機では、処理物の回収時に人手による作業が避けられず、さまざまなリスクが存在していました。デカンタ型や超高速遠心分離機などの沈降分離機では、処理物の回収や調整のために機器の分解作業が必要となり、作業負荷が大きいだけでなく、ケミカルハザードやバイオハザードのリスクが避けられませんでした。
全量回収が可能な機械では、これらの手作業が不要となり、作業者の安全性が向上します。さらに、処理物は外部環境との接触を完全に遮断された状態で回収されるため、異物混入リスクがゼロにできます。この特性は、GMP(医薬品製造管理基準)やHACCP(食品衛生管理基準)などの厳格な品質管理が求められる製造現場において、遠心分離機やろ過乾燥機を選ぶ際の基準となります。
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全量回収を目指す上での遠心分離機・ろ過乾燥機の課題
一般的な遠心分離機・ろ過乾燥機では、技術的な制約により全量回収が困難です。ここでは、それぞれの機器が抱える課題を詳しく解説します。
遠心分離機
一般的な遠心分離機では、処理物の全量回収を目指す上で機種によっていくつかの技術的な課題があります。
超高速遠心分離機:分離後の沈降固形物がグリースのような高い粘性と付着性を持つため、一般的な掻取装置では回収が困難です。そのため、機械の分解が必要となり、作業負荷と時間的ロスが発生します。
バスケット型遠心分離機:スクレーパとろ材の間にクリアランス(隙間)が存在し、このクリアランス分ケーキが必ず残留してしまいます。残留ケーキは次バッチの処理効率を低下させ、製品品質の安定性にも影響を与える可能性があります。
デカンタ型遠心分離機:分離精度を向上させるためには液面の高さの調整が必要です。液面の高さを調整するためには、堰板(堤防の役割を果たす部品)を変更する必要があります。堰板の変更には、遠心分離機の分解が必要となり、生産性の低下を招きます。
ろ過乾燥機
ろ過乾燥機における全量回収の最大の課題は、撹拌翼とろ材の間に必ずクリアランスを設ける必要があり、処理後にクリアランス部分にケーキが残留してしまうことです。
全量回収を実現するためには、この残留ケーキ層を剥離させ、さらに剥離したケーキを排出口まで確実に送り出すメカニズムが必要となります。
【種類別】遠心分離機の全量回収技術
タナベウィルテックが保有する遠心分離機の全量回収技術を以下の種類別に紹介します。
- 超高速遠心分離機
- バスケット型遠心分離機
- デカンタ型遠心分離機
超高速遠心分離機
超高速遠心分離機における全量回収の最大の課題は、分離後の沈降固形物が持つ高い粘着性でした。従来の超高速遠心分離機では、グリース状の粘着性を持つ処理物が内壁に強固に付着するため、通常の掻取装置では回収が不可能で、機械を分解して手作業で取り出す必要がありました。
タナベウィルテックが開発したバイオセトラ型超高速遠心分離機は、特許を取得したフラットスクレーパとスティックスクレーパという2種類の掻取機構により、掻取装置のみで粘着性の高いケーキの自動排出を可能にしました。これにより、作業時間の大幅な短縮、作業者の安全性向上、そして製品品質の安定化を同時に達成しています。
バスケット型遠心分離機
タナベウィルテックのバスケット型遠心分離機では、掻取スクレーパにソロバン玉機構のレジスタンスリムーバを搭載しています。残留ケーキ層にレジスタンスリムーバを食い込ませることで、回収が困難だったクリアランス部分のケーキも確実に掻き取れるようになりました。
さらに、エアーブローシステムを併用することで、ケーキの剥離効率を向上させています。ノズルから噴射される気体が、レジスタンスリムーバで掻き取られたケーキを効果的に吹き飛ばし、排出口へと送り出します。この二つの技術の組み合わせにより、バスケット型遠心分離機においても処理物の全量回収が実現され、歩留まりの向上と次バッチ処理時のろ過抵抗低減を同時に達成しています。
デカンタ型遠心分離機
デカンタ型遠心分離機における全量回収の課題は、分離精度を向上させるために必要な液面調整にありました。従来の装置では、液面高さを変更するために堰板を変更する必要があり、そのたびに機械を分解しなければなりませんでした。
タナベウィルテックのデカンタ型遠心分離機は、この課題を独自の可変インペラ装置によって解決しています。この装置は、吸水口であるスキミング部の高さを運転中に自由に調整可能。この技術により、分離液の清澄度や排出ケーキの含液率を容易に向上させることができるようになりました。
ろ過乾燥機の全量回収技術
タナベウィルテックのろ過乾燥機では、撹拌翼にガスナイフを取り付けることで、従来は回収が困難だった撹拌翼とろ材の間に残留するケーキの排出を可能にしています。
ガスナイフとは、不活性ガスの噴射によりケーキの全量回収を行えるシステムです。撹拌翼を回転させてケーキを外径側に移動させ、撹拌翼部分に取り付けられたノズルから噴射されるガスによって、ケーキを排出口へ吹き飛ばす仕組みとなっています。
全量回収ができる遠心分離機・ろ過乾燥機ならタナベウィルテックへ
本記事では、処理物の全量回収技術がもたらすメリットとして、残留ケーキ層の完全除去によるろ過抵抗の低減や処理効率の改善、作業者の安全性向上及び、機械の分解が不要となる取り組みについて解説しました。これらのメリットを実現するには、従来の遠心分離機・ろ過乾燥機が抱える技術的な制約を克服する必要があります。
タナベウィルテックでは、独自の特許技術を活用した全量回収システムを搭載した各種遠心分離機・ろ過乾燥機をラインナップしています。全量回収技術を搭載した遠心分離機・ろ過乾燥機の導入をご検討の際は、ぜひタナベウィルテックまでお気軽にお問い合わせください。
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